「AIで税理士は不要になる」――その予測、半分正解で半分間違っています

オックスフォード大学の研究では、税理士の仕事がAIに代替される確率は92.5%と発表されました。

この数字を見て、「やっぱり税理士は終わりだ」と思いましたか?

ちょっと待ってください。

消えるのは「税理士」ではなく、「今のやり方を変えない税理士」です。

実際、AI導入で作業時間を80%削減し、その分を高単価コンサルティングに振り向けて月額30万円の顧問契約を獲得している税理士法人が既に存在しています。

この記事では、「AIに何が奪われるのか」を正確に理解し、「AIでは絶対に代替できない価値」をどう構築するかを具体的に示します。


第1章:本当に消える業務TOP3(覚悟してください)

消える業務①:記帳代行(すでに消えかけている)

現実:

  • freee、マネーフォワード、弥生会計のAI自動仕訳機能の精度は98%
  • 銀行口座・クレジットカードとの自動連携で、入力作業そのものが不要に
  • AI-OCRで領収書をスマホ撮影→自動で仕訳完了

あなたの事務所への影響:

  • 記帳代行料(月額1〜3万円)が請求できなくなる
  • 記帳代行スタッフの稼働時間が激減
  • 「記帳代行+月次顧問」モデルの収益が30〜50%減少

データ: 記帳代行を主力業務とする税理士事務所の顧問料は、2020年比で平均27%下落しています。


消える業務②:定型申告書作成(5年以内に半自動化)

現実:

  • AIが試算表データから確定申告書を自動生成
  • 消費税申告、法人税申告の8割は「判断不要な定型処理」
  • 税制改正情報もAIが自動反映

具体例:

【従来】スタッフが2時間かけて申告書作成
 ↓
【AI導入後】AIが10分で下書き→税理士が15分で最終確認

削減時間:85%

あなたの事務所への影響:

  • 申告書作成を理由に「決算料=月額顧問料の4〜6ヶ月分」が請求しづらくなる
  • 顧問先が「AIで十分じゃないか?」と疑問を持ち始める

消える業務③:税務質問への単純回答(ChatGPTで代替可能)

現実: 顧問先が税理士に電話する前に、ChatGPTに質問する時代が来ています。

よくある質問の9割は、AIで回答可能:

  • 「この経費は計上できますか?」
  • 「インボイス制度っていつから?」
  • 「減価償却の計算方法は?」
  • 「役員報酬の変更時期は?」

データ: 2024年の調査では、経営者の34%*が「税務の簡単な質問はChatGPTで調べる」と回答しています。

あなたの事務所への影響:

  • 「質問に答えるだけ」の付加価値では、顧問料が正当化できない
  • 顧問先が「月3万円払う意味あるの?」と感じ始める

第2章:絶対に消えない業務TOP3(ここで勝負が決まる)

残る業務①:経営判断を伴う税務設計

AIにできないこと: 「数字の裏にある人間の事情」を読み取り、最適解を提案すること

具体例:

【顧問先の相談】
「今期、売上が好調で利益が出そうです。節税したいのですが...」

【AIの限界】
「役員報酬を増やす」「設備投資をする」などの選択肢を列挙するだけ

【人間の税理士の価値】
「社長、来期の事業計画はどうなっていますか?」
「お子さんの事業承継は考えていますか?」
「銀行融資を受ける予定は?」

→ これらを総合的に判断し、「今期は節税よりも内部留保を厚くして、
  来期の設備投資資金にすべき」といった戦略的提案を行う

月額30万円の根拠: この提案1つで、顧問先が数百万円〜数千万円の損失を回避できる


残る業務②:税務リスクの予見と対策

AIにできないこと: 「グレーゾーンの判断」と「税務署との交渉」

具体例:

【ケース】
顧問先が業務委託契約で外注費として処理している人件費

【AIの判断】
「外注費の要件を満たしているか、チェックリストで確認してください」

【人間の税理士の価値】
「この契約内容だと、税務調査で給与認定されるリスクが70%あります」
「契約書の文言をこう変更し、実態もこう改善すれば、リスクを20%に下げられます」
「もし税務署から指摘されたら、こういう論拠で反論します」

税務調査1件で追徴課税が数百万円になることも。このリスク回避だけで、顧問料の10年分以上の価値があります。


残る業務③:事業承継・相続の感情的調整

AIにできないこと: 「家族間の利害対立」「後継者の本音」を引き出し、全員が納得する着地点を見つけること

具体例:

【相続案件】
長男は会社を継ぎたい、次男は現金で相続したい、
母親は自宅に住み続けたい

【AIの限界】
「遺産分割シミュレーション」を複数パターン提示するだけ

【人間の税理士の価値】
・長男に「会社を継ぐ覚悟はあるか?」を本音で問う
・次男に「本当に必要な金額はいくらか?」を引き出す
・母親に「自宅を誰の名義にするか」の不安を解消する
・全員が納得する落としどころを見つけ、実行支援する

相続案件1件の報酬相場:50万円〜200万円


第3章:AI時代に月額30万円を稼ぐ税理士の「新・サービス設計」

戦略①:記帳代行を捨て、経営分析に特化する

従来型(月額3万円):

  • 記帳代行+試算表作成+年1回の決算申告
  • 面談は決算時のみ

AI時代型(月額10万円〜30万円):

  • 記帳は顧問先がクラウド会計で自動化(税理士は確認のみ)
  • 毎月の面談で「この数字から何をすべきか」を提案
  • 経営課題(資金繰り、採用、値上げ、新規事業)に踏み込む

実例: ある税理士法人は、顧問先に「freee導入支援(初回10万円)」を提供し、記帳代行から撤退。 その分の時間を「月次経営会議」に振り向け、顧問料を月3万円→10万円に引き上げ成功。


戦略②:AIを「武器」にして差別化する

今すぐ導入すべきAIツール5選:

  1. ChatGPT(月額$20)
    • 税制改正の要点を5分で要約
    • 顧問先向けレポートの下書き作成
    • 業種別の節税策リサーチ
  2. freee・MFクラウド会計のAI機能
    • 自動仕訳の精度を税理士が監修
    • 異常値の自動検知(横領・ミス発見)
  3. AI-OCR(Svaなど)
    • 領収書・請求書の自動読み取り
    • 顧問先の経理工数を80%削減→その分の時間を経営に
  4. Notion AI / Obsidian
    • 顧問先ごとの「提案ネタストック」を自動生成
    • 過去の成功事例を瞬時に検索
  5. 税務AIエージェント(今後登場予定)
    • 税制改正の影響シミュレーション自動化
    • 税務調査リスクの自動スコアリング

これらのツールを使いこなす税理士は、「AI時代の専門家」として差別化できます。


戦略③:高単価パッケージを設計する

月額30万円の内訳例:

【基本顧問】月額5万円
- 試算表確認・税務相談

【経営分析レポート】月額5万円
- 毎月の経営数字を5つの視点で分析
- 改善提案を3つ提示

【資金繰りコンサル】月額10万円
- 6ヶ月先までのキャッシュフロー予測
- 銀行交渉のサポート

【事業計画策定支援】月額10万円
- 年間事業計画の作成支援
- 四半期ごとの進捗確認と軌道修正

このパッケージが刺さる顧問先:

  • 売上3億円〜10億円の成長企業
  • 事業承継を控えた経営者
  • 新規事業を検討している法人

第4章:今日から始める3つのアクション

①今週やること(所要時間:3時間)

  • ChatGPT(有料版)に登録
  • 自社の顧問先リストを「AIで代替可能な業務」と「人間でないとできない業務」に分類
  • 記帳代行の売上比率を計算(30%以上なら危険信号)

②今月やること(所要時間:10時間)

  • 顧問先1社を選び、「経営分析レポート」を試作
  • 面談で「記帳は自動化し、経営相談に時間を使いませんか?」と提案
  • 反応が良ければ、他の顧問先にも展開

③3ヶ月でやること

  • 記帳代行中心の顧問先5社を、経営コンサル型に移行
  • 月額3万円→10万円への値上げ交渉(2社成功すれば月額14万円UP)
  • AIツールを使った業務効率化で、スタッフの残業を月20時間削減

結論:AIは「敵」ではなく「最強の武器」

税理士の仕事がなくなることはありません。

しかし、「記帳屋」「申告書作成マシン」のままでは、確実に淘汰されます。

AIが登場した今、税理士が提供すべき価値は明確です:

  1. 経営者の「判断」を支える戦略提案
  2. リスクを予見し、先回りして守る防衛策
  3. 感情と利害が絡む問題の調整役

これらは、AIには絶対にできません。

そして、この価値を提供できる税理士には、月額30万円を払う顧問先が確実に存在します。

「AIで税理士は終わり」と嘆くか、 「AIを武器に月額30万円を稼ぐ」か。

選ぶのは、あなたです。