ある日突然、紹介が途絶えた税理士の話
「先生、今月から新規顧客の紹介、ちょっと難しくなりそうです…」
地方銀行の支店長からこの一言を聞いた瞬間、K税理士(開業7年目)の顔から血の気が引きました。
彼の新規顧客の80%は、この支店長からの紹介でした。
その支店長が本社に異動。後任の支店長は別の税理士と懇意にしていました。
翌月から、新規顧客の獲得件数は月3件→月0件に。
「紹介営業だけに頼っていた」ことの危うさを、彼は身をもって知ることになりました。
衝撃のデータ:税理士の新規顧客獲得、70%が紹介経由
業界調査によると、税理士事務所の新規顧客獲得経路は以下の通りです:
| 獲得経路 | 割合 |
|---|---|
| 既存顧問先からの紹介 | 35% |
| 金融機関・士業からの紹介 | 25% |
| 紹介会社経由 | 10% |
| Web(HP・SEO) | 15% |
| その他 | 15% |
紹介営業だけで70%を占めています。
一見、「紹介営業が強い」ように見えますが、これは極めて危険な状態です。
なぜなら―
第1章:紹介営業の3大リスク(あなたの事務所は大丈夫?)

リスク①:紹介者に依存→1人の人事異動で終わる
現実のケース:
【税理士Aさん(開業5年目)】
- 新規顧客:年間12件
- そのうち9件:地元の商工会議所の事務局長からの紹介
- 結果:事務局長が退職→翌年の新規顧客は年間3件に激減
問題の本質: 紹介者が1〜2名に集中している場合、その人の異動・退職・方針転換で、新規獲得ルートが一瞬で消滅します。
あなたの事務所の診断:
- 新規顧客の50%以上を特定の1〜2名からの紹介に依存している → 危険度:高
- 紹介者が高齢(60代以上)で引退が近い → 危険度:高
- 紹介者との関係が「個人的な信頼」のみで、組織的な関係がない → 危険度:中
リスク②:景気変動の影響を直撃→不況時は紹介ゼロ
2020年コロナショック時のデータ:
【紹介営業のみの事務所】
- 2019年:新規獲得15件
- 2020年:新規獲得5件(▲67%)
- 理由:「今は新しい税理士を探す余裕がない」
【Web集客併用の事務所】
- 2019年:新規獲得30件
- 2020年:新規獲得25件(▲17%)
- 理由:「補助金・融資」などの検索需要が急増
問題の本質: 紹介営業は「景気が良いとき」「紹介者に余裕があるとき」にしか機能しません。
不況になると、
- 既存顧問先:自社の経営で精一杯→紹介する余裕なし
- 金融機関:融資審査が厳格化→税理士を紹介する余裕なし
- 士業:自分の顧客獲得で手一杯→他の士業に紹介する余裕なし
結果:紹介が一斉に止まります。
リスク③:成長の天井が低い→月2〜3件が限界、スケールしない
紹介営業の構造的限界:
1人の紹介者が年間に紹介できる件数は、平均2〜4件です。
仮に10人の紹介者がいても、年間20〜40件が限界。
これ以上増やすには:
- 紹介者を毎年10人ずつ増やし続ける(非現実的)
- 紹介者1人あたりの紹介件数を増やす(これも限界がある)
一方、Web集客は:
- SEO対策で上位表示されれば、月5〜10件の問い合わせが「自動」で入る
- 記事を増やせば増やすほど、流入が増える(スケール可能)
- 景気に左右されない(むしろ不況時は検索需要が増える)
第2章:Web集客vs紹介営業――データで見る圧倒的な差
比較①:新規獲得件数
| 項目 | 紹介営業のみ | Web集客併用 |
|---|---|---|
| 年間新規獲得 | 10〜15件 | 30〜50件 |
| 月平均問い合わせ | 1〜2件 | 3〜5件 |
| 成長性 | 低い(頭打ち) | 高い(スケール可能) |
比較②:獲得コスト
| 項目 | 紹介営業のみ | Web集客併用 |
|---|---|---|
| 初期投資 | 0円 | ホームページ制作:30〜100万円 |
| 月額コスト | 紹介手数料(年間顧問料の40〜70%)※紹介会社利用時 | SEO施策:実質0円(自社運用の場合) |
| 1件あたり獲得コスト | 12〜20万円 | 2〜5万円(HPの減価償却含む) |
具体例:
【紹介会社経由で年間10件獲得】
- 顧問料:月3万円×12ヶ月=36万円
- 紹介手数料:36万円×50%=18万円
- 10件分:18万円×10件=180万円
【Web集客で年間20件獲得】
- ホームページ制作:50万円(5年償却)=年間10万円
- SEO対策:自社運用で0円
- 20件分:年間10万円÷20件=0.5万円/件
年間コスト差:170万円
比較③:安定性
| 項目 | 紹介営業のみ | Web集客併用 |
|---|---|---|
| 紹介者依存 | 高い(1〜2名に集中リスク) | なし(検索エンジン依存) |
| 景気変動影響 | 高い(不況時は激減) | 低い(むしろ増える) |
| 競合対策 | 困難(紹介者を奪われる) | 可能(SEO順位の改善) |
第3章:「営業が苦手な税理士」でもできるWeb集客3ステップ

「Web集客なんて、ホームページ作っても問い合わせなんて来ないでしょ」
そう思っていませんか?
実は、税理士業界のWeb集客は「競合が弱い」ため、正しくやれば半年で結果が出ます。
【STEP1】SEO特化型ホームページ作成(初期投資:50万円、期間:3ヶ月)
①「地域名×税理士」で必ず上位表示を狙う
検索キーワード例:
- 「税理士 渋谷区」→ 月間検索数:500回
- 「税理士 横浜市」→ 月間検索数:800回
- 「税理士 福岡市」→ 月間検索数:600回
上位表示されれば:
- 検索順位1位のクリック率:28%
- 月間500回検索×28%=140回/月の流入
- 問い合わせ率3%とすると:月4.2件の問い合わせ
具体的な施策:
- タイトルタグに必ず「税理士 〇〇市」を含める
- トップページに「〇〇市で税理士をお探しの方へ」という見出し
- 事務所の住所・地図を明記(Googleが地域性を判断)
②専門特化ページを必ず作る
顧問先が検索するキーワード:
- 「創業 税理士」→ 月間検索数:1,200回
- 「相続税 税理士」→ 月間検索数:2,400回
- 「資金調達 税理士」→ 月間検索数:800回
専門ページの構成例:
【ページタイトル】
「創業支援に強い〇〇市の税理士|創業融資・補助金も対応」
【見出し構成】
1. 創業時に税理士が必要な3つの理由
2. 当事務所の創業支援サービス
3. 創業融資サポート実績(〇〇件)
4. よくある質問
5. 無料相談のご案内
これを3〜5ページ作るだけで、流入が3倍になります。
③問い合わせ導線を最適化する
多くの税理士HPの失敗:
- 問い合わせフォームが「お問い合わせ」ページの奥深くに隠れている
- 電話番号が小さくて見えない
- スマホ対応していない
正解:
- 全ページの右上に「無料相談はこちら」ボタン(目立つ色)
- 電話番号を大きく表示(スマホならタップで発信)
- 問い合わせフォームは3項目以内(名前・電話・相談内容)
改善前→改善後のデータ:
【改善前】
- 月間流入:200件
- 問い合わせ:2件(問い合わせ率1%)
【改善後】
- 月間流入:200件(変わらず)
- 問い合わせ:6件(問い合わせ率3%)
流入を増やさなくても、問い合わせ率を上げるだけで3倍になります。
【STEP2】Googleビジネスプロフィール最適化(初期投資:0円、期間:1日)
なぜGoogleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)が重要か
「税理士 渋谷区」で検索すると、通常の検索結果の**上に「マップ枠」**が表示されます。
このマップ枠に表示されるだけで、クリック率が3倍になります。
実際のデータ:
【通常の検索結果(5位)】
- 表示回数:月1,000回
- クリック数:30回(クリック率3%)
【マップ枠(3位以内)】
- 表示回数:月1,000回
- クリック数:150回(クリック率15%)
今すぐやるべき5つの設定
①ビジネス情報を完全に埋める
- 事務所名
- 住所(必ず番地まで正確に)
- 電話番号
- 営業時間
- ウェブサイトURL
- カテゴリ(「税理士」を選択)
②「商品」欄にサービスを追加
【登録例】
- 創業支援サービス(料金:月額3万円〜)
- 相続税申告サポート(料金:30万円〜)
- 顧問契約(料金:月額3万円〜)
これを登録するだけで、「どんなサービスがあるか」が一目でわかります。
③写真を10枚以上登録
- 事務所の外観・内観
- スタッフの写真
- 面談スペース
- セミナー風景など
写真が充実しているだけで、問い合わせ率が35%向上します。
④「投稿」機能で定期更新
【投稿例】
「年末調整の準備はお済みですか?当事務所では年末調整サポートを承っております。お気軽にご相談ください。」
月1〜2回の投稿で、Googleからの評価が上がります。
⑤口コミへの返信を必ず行う
- 良い口コミ:「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします」
- 悪い口コミ:「ご指摘ありがとうございます。改善に努めます」
返信率100%を目指してください。
【STEP3】専門特化コンテンツ30本作成(初期投資:0円、期間:10ヶ月)
なぜ「30本」なのか
Googleは「専門性」を評価します。
30本のコンテンツがあれば、Googleから「この事務所は〇〇に詳しい」と認識されます。
実際の効果:
【コンテンツ10本】
- 月間流入:50件
【コンテンツ30本】
- 月間流入:200件(4倍)
どんなコンテンツを書けばいいか
①よくある質問を記事化
【記事例】
- 「個人事業主はいつから税理士を雇うべき?」
- 「確定申告を税理士に頼むといくらかかる?」
- 「税理士の顧問料の相場は?」
②業種別の税務ポイント
【記事例】
- 「飲食店経営者が知っておくべき節税対策5選」
- 「建設業の税務調査で指摘されやすいポイント」
- 「IT企業の経理でよくあるミス」
③税制改正の解説
【記事例】
- 「2024年インボイス制度の最新情報」
- 「電子帳簿保存法への対応方法」
記事作成のコツ(営業が苦手な税理士でもできる)
コツ①:1記事30分で書く
- 文字数:1,000〜1,500文字
- 構成:見出し3つ+まとめ
- 完璧を目指さない(60点でOK)
コツ②:ChatGPTを活用
【プロンプト例】
「個人事業主がいつから税理士を雇うべきかについて、1,500文字で記事を書いてください。見出しは3つで、わかりやすく書いてください。」
→下書きを作成してもらい、自分で加筆修正(作業時間:15分)
コツ③:月3本ペースで継続
- 週1本はきつい→月3本なら続く
- 10ヶ月で30本達成
第4章:実例――Web集客で年間20件獲得した地方税理士の話
事例:T税理士(開業3年目、地方都市)
【施策前】
- 新規獲得:年間8件(すべて紹介)
- ホームページ:あるが放置(年間流入50件)
- 月間問い合わせ:0〜1件
【施策実行】
- STEP1:ホームページをSEO最適化(費用:40万円)
- STEP2:Googleビジネスプロフィール完全設定(費用:0円)
- STEP3:専門記事を月3本作成(10ヶ月で30本)
【施策後6ヶ月】
- 「税理士 〇〇市」で検索1位
- Googleマップで3位以内表示
- 月間流入:250件
- 月間問い合わせ:平均3.5件(年間42件)
- 契約率:30%→年間12.6件の新規契約
【T税理士のコメント】 「最初は『ホームページなんて…』と半信半疑でしたが、記事を書き始めて3ヶ月で問い合わせが入り始めました。今では紹介営業よりもWeb経由の問い合わせの方が多くなっています。何より、紹介が途絶える不安がなくなりました」
第5章:今日から始める3つのアクション
【今週やること】(所要時間:3時間)
①自分の事務所の「紹介依存度」を計算する
【計算式】
昨年の新規顧客のうち、紹介経由の件数÷総新規件数×100
例:15件中12件が紹介→80%(危険水域)
②「税理士 〇〇市」でGoogle検索してみる
- 自分の事務所が何位に表示されるか確認
- 競合のホームページを5つチェック
- 「どんなページがあるか」「どんな情報を載せているか」をメモ
③Googleビジネスプロフィールに登録(未登録の場合)
- https://www.google.com/intl/ja_jp/business/
- 5項目(事務所名・住所・電話・営業時間・URL)を入力
【今月やること】(所要時間:10時間)
①ホームページに「専門特化ページ」を3つ追加
- 創業支援ページ
- 相続税ページ
- 資金調達ページ
②Googleビジネスプロフィールの写真を10枚登録
- スマホで撮影でOK
- 事務所の外観・内観・スタッフ・面談スペース
③ブログ記事を3本書く
- 「よくある質問」から3つ選んで記事化
- 1記事1,000文字×3本=3,000文字
【3ヶ月でやること】
①月3本ペースでブログを継続(3ヶ月で9本)
- ChatGPT活用で作業時間を短縮
- 完璧を目指さず、60点でOK
②Googleビジネスプロフィールの投稿を月2回
- 税制改正情報
- セミナー案内
- 年末調整のお知らせなど
③アクセス解析で改善
- Googleアナリティクスを導入
- 「どのページがよく見られているか」を確認
- 人気ページを参考に、似たテーマの記事を追加
結論:紹介営業を「捨てる」のではなく、Web集客と「両立」する
この記事で最も伝えたいこと:
紹介営業が悪いわけではありません。
問題は「紹介営業だけ」に依存していることです。
理想的な新規獲得の内訳は:
- 紹介営業:40%(既存顧問先・金融機関・士業)
- Web集客:40%(ホームページ・SEO・MEO)
- その他:20%(セミナー・広告など)
このバランスなら、どれか1つが途絶えても、事務所は継続できます。
最後に:1年後、あなたの事務所はどちらになっていたいですか?
【パターンA:紹介営業だけに依存し続ける】
- 紹介者が異動・退職したら、新規獲得ゼロ
- 景気が悪くなったら、紹介が途絶える
- 成長の天井が見えている
【パターンB:Web集客を併用している】
- 紹介が途絶えても、Web経由で月3〜5件の問い合わせ
- 景気に左右されず、安定的に新規獲得
- 記事を増やせば増やすほど、流入が増える
選ぶのは、あなたです。
「紹介が来なくなった瞬間、事務所が終わる」
そんな恐怖から解放されるために、今日から一歩を踏み出しませんか?
