前回の記事で見てきた通り、税理士業界は深刻な集客課題に直面しています。しかし、これらの課題に対する有力な解決策が存在します。それが「LINEマーケティング」です。

「LINEはBtoCのツールでは?」「税理士のような専門職に本当に合うの?」そう思われる方もいるかもしれません。しかし実際には、税理士法人こそLINEの力を最大限に活用できる業種なのです。ここでは、なぜ今、税理士業界にLINEが必要なのか、4つの観点から詳しく解説していきます。

経営者が最も使うコミュニケーションツールになっている

LINEが税理士業界に必要な最大の理由、それは「経営者が日常的に使っているツールだから」という、シンプルかつ決定的な事実です。

圧倒的な利用率と生活インフラ化

2025年3月末時点でのLINEの月間アクティブユーザー数(MAU)は9,800万人に達しています。これは日本の人口の約78%に相当します。さらに注目すべきは、総務省の令和7年版情報通信白書によると、LINE全体の利用率は94.9%という驚異的な数字を記録していることです。

特に、税理士の主要顧客層である30代〜60代の経営者世代では、利用率は90%以上を維持しています。60代でさえも91.1%が利用しており、もはやLINEは年齢を問わず「使っていて当たり前」のツールとなっているのです。

ビジネスシーンでのLINE活用が当たり前に

かつてLINEは「プライベートで友人や家族と連絡を取るツール」というイメージが強くありました。しかし今や、ビジネスシーンでもLINEは広く活用されています。

多くの企業で、取引先との連絡や社内コミュニケーションにLINEが使われています。ビジネス版のLINE WORKSは52万社以上に導入され、中小企業の業務連絡ツールとして定着しました。経営者同士の情報交換も、今やLINEで行われることが珍しくありません。

つまり、あなたの見込み客である経営者は、すでに日常的にLINEでビジネスのやり取りをしているのです。税理士からの連絡もLINEで受け取ることに、何の違和感もありません。むしろ「使い慣れたツールで税理士と連絡が取れる」ことを歓迎する経営者が多いのが実情です。

メールよりも気軽で、電話よりも負担が少ない

従来、税理士事務所と顧客のコミュニケーション手段は、主に「電話」と「メール」でした。しかしこの2つには、それぞれ問題があります。

電話の課題

  • 相手の時間を奪うため、気軽にかけにくい
  • 忙しい経営者はなかなか電話に出られない
  • 言った・言わないのトラブルが起きやすい
  • 記録が残りにくい

メールの課題

  • 形式的な挨拶文が必要で面倒
  • 大量のメールに埋もれて見落とされやすい
  • 開封されているかわからない
  • 若い世代はそもそもメールをあまり使わない

一方、LINEはこれらの問題を見事に解決しています。

LINEのメリット

  • 短い文章で気軽にやり取りできる
  • 既読機能で相手が見たかどうかわかる
  • プッシュ通知で見落とされにくい
  • 過去のやり取りが簡単に検索できる
  • 画像や資料の共有も簡単
  • 音声メッセージも送れる

「ちょっと確認したいことがある」「簡単な質問をしたい」といった小さなコミュニケーションも、LINEなら双方にとって負担なく実現できるのです。

意思決定者である経営者に直接リーチできる

BtoBマーケティングの難しさの一つが、「意思決定者になかなか届かない」ことです。大企業であれば、営業パーソンと決裁者の間に何人もの階層があり、情報が届くまでに時間がかかります。

しかし中小企業の場合、経営者自身がLINEをチェックしています。つまり、LINE公式アカウントを通じて発信した情報は、意思決定者である経営者に直接届くのです。

これは非常に大きなアドバンテージです。「決算前に知っておくべき節税対策」「新しい補助金の情報」といった重要な情報を、タイムリーに経営者本人に届けることができます。メールのように秘書や経理担当者でフィルタリングされることもありません。

経営者の「普段使い」のツールになることの意味

最も重要なのは、LINEが経営者にとって「毎日必ず開くアプリ」だということです。メールは「見るのが億劫」と感じる人も多いですが、LINEは1日に何度もチェックします。

あなたの税理士法人のLINE公式アカウントが、経営者の「友だちリスト」に入るということは、経営者が毎日開くアプリの中に、あなたの事務所の存在があるということです。これは、非常に強力なポジショニングなのです。

税理士への相談が必要になったとき、経営者の頭に真っ先に浮かぶのは、日常的に接点がある税理士です。LINEを通じて継続的にコミュニケーションを取ることで、「何かあったらあの税理士に相談しよう」という関係性を自然に構築できるのです。

「相談のハードルを下げる」ことができる

税理士サービスの大きな課題の一つが、見込み客からの「最初の一歩」を引き出すことの難しさです。LINEは、この「相談のハードル」を劇的に下げることができます。

税理士への相談は「敷居が高い」と感じる経営者が多い

実は多くの経営者が、税理士への相談に対して心理的なハードルを感じています。その理由はいくつかあります。

1. 専門家への気兼ね 「こんな基本的なことを聞いたら、無知だと思われるのではないか」 「忙しい先生の時間を奪って申し訳ない」 こうした遠慮の気持ちが、相談を躊躇させます。

2. 正式な相談というプレッシャー 税理士事務所に電話をかけたり、面談の予約を入れたりするのは、「正式な相談」というイメージがあります。「もっと気軽に聞きたいだけなのに」と思っても、そのハードルが高く感じられるのです。

3. 費用への不安 「相談したら必ず契約しなければいけないのでは」 「相談料がいくらかかるかわからない」 こうした不安も、相談を躊躇させる要因です。

実際、税理士事務所へのインタビューでも「税理士さんに相談するのは敷居が高いと感じる方もいらっしゃる」「もっと気軽に相談してほしいのだが」という声は多く聞かれます。

LINEなら「ちょっと聞いてみよう」という気軽さ

この心理的ハードルを劇的に下げるのが、LINEです。

普段から友人や家族とのやり取りに使っているLINEで税理士とつながることで、経営者の心理的な距離感は大きく変わります。

「電話をかける」→ 「LINEでメッセージを送る」 「面談の予約を入れる」→ 「とりあえずLINEで聞いてみる」 「正式な相談」→ 「軽い問い合わせ」

このように、コミュニケーションの形式が変わるだけで、心理的なハードルは大幅に下がります。

「確定申告の期限っていつまででしたっけ?」 「この経費、計上できますか?」 「助成金の情報を聞いたんですが、詳しく教えてもらえますか?」

こういった小さな質問が、LINEなら気軽に送れるのです。そして、この「小さな接点」こそが、信頼関係構築の第一歩となります。

潜在顧客との接点を増やし、関係構築の入口に

マーケティングの世界では、「ザイオンス効果(単純接触効果)」という心理効果が知られています。これは、人は繰り返し接触することで、その対象に好意を持ちやすくなるという法則です。

従来の税理士マーケティングでは、この「接触頻度」を増やすことが困難でした。セミナーを開催しても年に数回、メールマガジンも月1回程度。見込み客との接点は限られていました。

しかしLINEなら、週に1回、あるいは必要に応じてそれ以上の頻度で情報を届けることができます。さらに、見込み客からの質問にリアルタイムで対応することで、双方向のコミュニケーションも生まれます。

この継続的な接点が、「知らない税理士」を「顔の見える相談相手」に変えていくのです。

見込み客の育成(ナーチャリング)がしやすい

多くの見込み客は、「今すぐ税理士と契約したい」という状態ではありません。むしろ大半は「いつかは必要になるかも」「今の税理士に不満はないけど…」といった潜在層です。

こうした潜在層を「今すぐ客」に育てていくプロセスを、マーケティング用語で「ナーチャリング(見込み客育成)」と呼びます。そしてLINEは、このナーチャリングに非常に適したツールなのです。

LINEでのナーチャリングの流れ

  • 無料診断やお役立ち資料で友だち追加 「決算前チェックリスト」「節税対策10のポイント」などを提供し、LINEに登録してもらう
  • ステップ配信で段階的に情報提供 登録直後から自動で、税理士の役割や事務所の特徴を伝えるメッセージを配信
  • 定期的な有益情報の配信 税制改正、補助金情報、経営のヒントなど、経営者にとって価値ある情報を継続的に提供
  • 個別の質問への対応 LINEで気軽に質問してもらい、丁寧に回答することで信頼を獲得
  • タイミングを見極めて商談化 関係性が構築できた段階で、無料相談や見積もり提案へ誘導

この一連のプロセスを、LINEというプラットフォーム上で完結できます。しかも、見込み客にとっては「押し付けがましい営業」ではなく、「有益な情報を届けてくれる頼れる専門家」として認識されるのです。

「相談しやすい税理士」というポジショニング

最終的に、LINEを活用することで得られる最大の価値は、「相談しやすい税理士」というポジショニングです。

税理士の専門性や知識は重要です。しかしそれと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが、「気軽に相談できるかどうか」という要素です。

経営者は日々、大小さまざまな判断を迫られています。その中には、税務や財務に関わる判断も数多くあります。そんな時、「LINEでサッと聞ける税理士」の存在は、経営者にとって非常に心強いのです。

LINE公式アカウントを持つことは、単なる連絡手段の追加ではありません。それは、あなたの税理士法人を「相談しやすい、距離の近い専門家」として位置づける戦略的な選択なのです。

メールマーケティングの限界を超える到達率・開封率

LINEが税理士のマーケティングツールとして優れている理由の一つが、圧倒的な「情報到達力」です。どんなに良い情報を発信しても、届かなければ意味がありません。

メールマーケティングの厳しい現実

多くの税理士事務所が、メールマガジン(メルマガ)を発行しています。月次で税務情報や経営のヒントを配信し、顧客や見込み客との接点を維持しようとしています。

しかし、メールマーケティングの効果は年々低下しています。その最大の理由が、開封率の低さです。

メルマガの平均開封率:約11〜20%

業界別の調査データによると、BtoBメールマガジンの平均開封率は約20〜30%程度です。つまり、100人に送っても、実際に開封して読んでくれるのは20〜30人程度。残りの70〜80人には、あなたの情報は届いていないのです。

さらに深刻なのは、この数字は年々悪化していることです。メールボックスに届くメールの数は増え続け、重要なメールが埋もれてしまうのが日常茶飯事です。企業の経営者ともなれば、1日に数十通、時には100通以上のメールを受信します。その中で、税理士事務所からのメルマガが開封される確率は、決して高くありません。

LINE公式アカウントの平均開封率:約60〜80%

一方、LINE公式アカウントから配信されるメッセージの開封率は、驚異的な数字を記録しています。

複数の調査データを総合すると、LINE公式アカウントの平均開封率は約60〜80%。東急グループの事例では、メルマガの開封率が11.4%だったのに対し、LINEは52.4%で約4.6倍という結果が出ています。

開封率の差は約3〜6倍

つまり、同じ情報を発信しても、メールとLINEでは3〜6倍もの差があるということです。

これを具体的な数字で見てみましょう。

顧客リスト1,000人に情報配信した場合

メルマガLINE公式アカウント
配信数1,000通1,000通
開封率20%70%
実際に届いた人数200人700人

同じ労力で情報発信をしても、LINEなら3.5倍多くの人に情報を届けられるのです。

なぜLINEの開封率はこれほど高いのか?

LINEの開封率が高い理由は、いくつかあります。

1. プッシュ通知の力 LINEはメッセージが届くと、スマートフォンのロック画面に通知が表示されます。この「強制的に目に入る」仕組みが、高い開封率を支えています。

2. 日常的に開くアプリ 多くの人が1日に何度もLINEアプリを開きます。メールアプリよりも圧倒的に開く頻度が高いのです。

3. 受信箱が整理されている メールのように大量のメッセージで埋もれることが少ないため、見落とされにくいのです。

4. 友だち登録は能動的なアクション LINE公式アカウントの友だち登録は、ユーザーが自ら「友だち追加」ボタンを押す能動的なアクションです。つまり、「この情報が欲しい」という意思表示をした人だけが登録しているため、関心度が高く、開封率も上がります。

確実に情報を届けられる強力なツール

税理士にとって、情報発信の目的は何でしょうか。それは、見込み客や既存顧客に「有益な情報を届け、信頼関係を構築すること」です。

どんなに素晴らしい節税情報、経営アドバイス、補助金の案内を作っても、それが相手に届かなければ意味がありません。

LINEは、この「確実に届ける」という点で、他のどのツールよりも優れています。メールマーケティングに限界を感じている税理士法人にとって、LINEは情報発信の効果を劇的に高める救世主となり得るのです。

「届く」だけでなく「読まれる」

さらに重要なのは、LINEは開封率だけでなく、クリック率も高いという点です。

メッセージ内にURLを記載した場合、実際にクリックしてもらえる確率も、メールに比べて大幅に高くなります。これは、スマートフォンでの閲覧が前提となっているLINEならではの特性です。

つまりLINEは、

  • 届く(到達率が高い)
  • 開封される(開封率が高い)
  • 読まれる(精読率が高い)
  • 行動してもらえる(クリック率が高い)

という、マーケティングコミュニケーションの理想的な流れを実現できるツールなのです。

顧客とのコミュニケーション効率が劇的に向上

LINEのメリットは、新規顧客獲得だけにとどまりません。既存顧問先とのコミュニケーションにおいても、業務効率と顧客満足度を大幅に向上させることができます。

決算時期のリマインド、税制改正情報の即座な共有

税理士業務において、タイムリーな情報共有は非常に重要です。しかし従来の方法では、この「タイムリー」が実現しづらいという課題がありました。

従来のコミュニケーション手段の課題

  • 電話:一件一件かけるのは時間がかかる。不在の場合は伝わらない
  • メール:送っても開封されない。緊急性が伝わりにくい
  • 郵送:到着まで時間がかかる。コストも高い
  • 訪問:最も確実だが、時間とコストがかかりすぎる

一方、LINEを活用すれば、重要な情報を瞬時に全顧客に届けることができます。

活用例1:決算月のリマインド 「◯◯社長、来月が決算月ですね。必要書類のご準備をお願いします」といったメッセージを、決算月の前月に自動配信。取り急ぎ意識してもらえます。

活用例2:税制改正の速報 インボイス制度や電子帳簿保存法など、重要な税制改正があった場合、いち早く情報を配信。「何をいつまでにすべきか」を明確に伝えることで、顧客の不安を解消します。

活用例3:補助金・助成金の案内 新しい補助金制度が発表されたら、該当しそうな顧客に限定して情報を配信。「◯◯社長の会社は対象になる可能性があります」と個別にメッセージを送ることもできます。

このように、重要な情報をタイムリーに届けられることは、税理士の付加価値を高めることに直結します。「あの税理士は、いつも有益な情報をいち早く教えてくれる」という評価は、強固な信頼関係につながります。

1対1のチャットで個別相談にも対応可能

LINE公式アカウントには、「1対1トーク」機能があります。これを活用すれば、個別の顧客からの相談にチャットで対応できます。

従来の問い合わせ対応の課題

  • 電話での問い合わせ:対応時間が限られる。記録が残らない
  • メールでの問い合わせ:返信に時間がかかる。見落としのリスク

LINEでの問い合わせ対応のメリット

  • 気軽に質問してもらえる:顧客の心理的ハードルが低い
  • スキマ時間で対応できる:移動中でもスマホで返信可能
  • やり取りの記録が残る:後から見返せる。言った・言わないのトラブル防止
  • 資料の共有が簡単:画像やPDFを簡単に送れる
  • スタンプで親しみやすい対応:堅苦しくないコミュニケーションが可能

「ちょっと聞きたいことがあるけど、わざわざ電話するほどでもない…」という小さな疑問に、LINEなら気軽に対応できます。こうした小さな積み重ねが、顧客満足度を高め、長期的な関係維持につながるのです。

自動応答機能で24時間365日の初期対応

税理士事務所の営業時間は、平日の9時〜18時が一般的です。しかし経営者が疑問を抱くタイミングは、営業時間内とは限りません。夜間や休日に「そういえば、あれってどうなんだろう?」と思うこともあるでしょう。

LINE公式アカウントの「自動応答機能」を使えば、営業時間外でも基本的な対応が可能になります。

自動応答機能の活用例

1. よくある質問への自動回答 「確定申告の期限はいつですか?」 「決算書類は何が必要ですか?」 といった頻出質問に対して、あらかじめ用意した回答を自動で返信。

2. 営業時間外のお知らせ 「現在は営業時間外です。お急ぎの場合は緊急連絡先(◯◯◯◯)へ。通常のお問い合わせは翌営業日に担当者より回答いたします」

3. 簡易診断ツール 「あなたの会社に最適な節税対策を診断します」といった簡易診断ツールを組み込み、顧客が自分で情報を得られる仕組みに。

4. 予約受付 「無料相談のご予約はこちらから」とリンクを提示し、24時間いつでも予約可能に。

これらの自動応答は、AIチャットボットやLステップなどのツールを使えば、さらに高度な設定が可能です。簡単な質問は自動で、複雑な相談は有人対応へ、というように切り分けることで、対応効率を大幅に向上させられます。

顧問先満足度の向上にもつながる

これらすべての要素が組み合わさることで、最終的には顧問先満足度の向上という大きな成果につながります。

満足度の高い顧問先は、

  • 長期的に契約を継続してくれる
  • 追加サービスを購入してくれる
  • 他の経営者に紹介してくれる

という、税理士法人にとって理想的な顧客となります。

実際、LINEを導入した税理士事務所からは、 「顧客からの問い合わせ対応がスムーズになった」 「顧客との距離が近くなった」 「解約率が下がった」 といったポジティブな声が多く聞かれます。

LINEは新規集客のツールであると同時に、既存顧客との関係強化、そして顧客満足度向上のツールでもあるのです。

このように、LINEは税理士業界が抱えるさまざまな課題に対する解決策となり得ます。経営者が日常的に使うツールであること、相談のハードルを下げられること、圧倒的な情報到達力、そしてコミュニケーション効率の向上。これらすべてが、「なぜ今、税理士業界にLINEが必要なのか」という問いへの答えなのです。